大阪錫器株式会社は約200年もの長い歴史がある。現在の代表である今井達昌(たつまさ)さんで何代目にあたるのだろうか?
今井さん「これもわからないんです。祖父の代ではもうやっていましたが、どこまで遡るのかはわからないですね。私は小さい頃からこの仕事を見て育ってきて、自分もモノづくりが好きだったこともあり、大学を卒業して家業に入りました。入ってからは修行の日々の中で、父や職人とぶつかりあいながらもこの道を自分なりにやってきました。」
錫職人の道のり
脈々と受け継がれる伝統の技。江戸から明治、大正、昭和、平成と激動の時代を生きてきた錫の器。その製造には長年培われた職人技を要するが、一人前の職人になるまでにはどのくらいの期間がかかるのだろうか。
今井さん「私たちの言葉で、いわゆる“半人前”というのが10年~15年くらい経ったころでしょうかね。一人前なんていったら30年~40年は必要なんじゃないかな?職人なんて、死んだときに『あの人はいいものを作ってたな』と言われれば一人前だったということじゃないですか?」
人生の最後まで満足することがない職人技の世界。より良いものを目指すことが次の創作意欲の原動力になると今井さんは言う。では錫器の製造工程で最も職人の技が必要となるのはどの工程なのだろうか?