> > 薩摩彫金 木原史裕さん(木原製作所)

2010年3月2日


オンラインマガジン-日本各地の職人を訪ね、Made in Japanのものづくりの現場をご紹介しています。
町のいたるところに仏壇に関わる工房があり、その中で育った木原さん。いつも金槌で叩いているトントンという音が響いている環境で育ち、幼い頃からさまざまな工具を使って工作をしていたという。

磨崖仏やかくれ念仏など、古来より仏教と密接な関わりあいのある鹿児島県南九州市川辺町。川辺と仏教文化の繋がりは平安時代、壇ノ浦の戦いで敗れた平家の落人が祖先供養のために磨崖仏を刻んだことがはじまりと伝えられ、以来 明治時代に至るまでに梵字や五輪搭・宝印搭の供養搭・仏像など全部で193体が残されている。川辺の人々の信仰心はやがて産業として地域に根づき、12世紀頃から作られた川辺仏壇は昭和50年に国の伝統的工芸品に指定された。その仏壇作りで培われてきた装飾金具の技を進化させたモノづくりをしている木原製作所の代表である木原史裕さんにお話を伺いました。

仏教文化が色濃く残る川辺の町

川辺町では古くから仏教文化が根付いている地域だそうですね。木原さんが子供の頃はどんな風景だったのでしょうか?

木原「そうですね。川辺町は「薩摩の小京都」と呼ばれる知覧町に隣接していて、町内には清水、花園、小栗栖など京都にちなんだ地名もあります。この町には仏具の職人が多く集まっている土地柄ですから・・・ウチの両隣も仏壇屋さんですし、いつも金槌で叩いているトントンという音が響いている環境で育ちました。小学校の夏休みの工作なんかは、普通の家ではないような工具を使って宿題を作っていましたね(笑)」

町のいたるところに仏壇に関わる工房があり、その中で育った木原さん。会社は昭和32年に創業。そこには戦後の時代背景があった。

木原「当時は戦後経済復興の時期でしたので、戦没者の方のご供養もあり、仏壇の需要が増えていた時代でした。そういった背景のなかで木原製作所は創業しました。私自身は、卒業後、やはり一度は別の世界を見てみたいと思っていたこともあり別の仕事をしていましたが、28歳の頃に家業に入りました。ウチの仕事は工業製品や仏壇金具が全体の9割を占めていますので、実はインテリア雑貨は1割にも満たないんですよ。」

仏壇作りの技を活かした製品づくりへの挑戦

川辺仏壇は、杉、松などを木地の材料とし、天然本漆塗りの後、純金箔や純金粉を使用し仕上げを施す。木地、宮殿、彫刻、金具、蒔絵、塗り、仕上げの各部門の職人たちの分業体制により製作され、小型の仏壇であることも特徴のひとつ。木原製作所では装飾金具を専門に行なっており、その技を活かしたインテリア雑貨が、今回ご紹介する錫製の花小皿だ。

木原「なぜインテリア雑貨を手掛けるようになったかというと、2つ理由があります。ひとつには、先代はもともと美術展に出展できるような工芸品をずっと作りたかったようなのですが、それ以外の仕事に追われてなかなか手をつけることができなかったんです。ふたつめの理由は、昔は仏壇の需要も今より多かったため、修行を積めば仏壇職人として独立することができましたが、だんだん仏壇の仕事だけでは後継者が育たなくなってきている状況がありました。そこで『もっとみんなが親しみやすいもの』『生活に根ざした工芸品』を作っていけばこの仕事の職人を目指す人も増えるのではないかという思いで、昭和60年頃から仏壇作りの技術を活かした製品開発へのチャレンジをはじめました。」

仏壇作りの技術がつまった銀製花小皿。

当初の市場の反応はいかがでしたか?

木原「はじめはなかなか広がらなかったですね。花小皿は今から10数年前に発売したのですが、当時は展示会や物産展に出品してもその場限りになってしまってなかなか先に繋げることができなかった。転機となったのは今から5年程前、平成17年頃にギフトショーにブース出展したことでした。その時は「ちょか」(焼酎の有名産地である鹿児島で、専用の器の呼び名)がメインだったのですが、一緒に出品した花小皿がコーディネーターの方の目に止まり、そこから東京などのお店で取扱いをしていただけるようになりました。」

職人の世界では、自分が満足してしまってはダメ

仏壇作りの技を活かし新しい分野にチャレンジすることで道を開いた木原製作所。実を結ぶまでにはくり返し挑戦する気持ちを持ち続けなければならない。長い伝統を持つ職人の世界で、一人前の職人と言われるまでにはどれくらいの道のりなのだろうか?

木原「一人前の職人になるには10年くらいかかると言われています。でも、もちろん10年経っても満足することはありません。それがこの仕事の一番難しいところでしょうか。その時は良いものができたと思っても、例えば他の人の作品を見ると、まだまだだと気づかされます。とにかくこの世界は自分が満足してしまってはダメで、常にチャレンジ精神がないと発展していかないんです。」

ものづくりの世界では満足して立ち止まってしまうといつの間にか取り残されてしまう。伝統産業も残していかなければいけないことと、変わらなければならないことがある。生産の現場では常に考え、手を休めることなく挑戦を続ける職人の姿がある。

木原「いま川辺で仏壇の金具を作っている会社は12社くらいですね。ウチの社内では職人は7人ほどおりまして、20代が2人、あとは30~40代がほとんどです。若い20代の者は職人を目指してがんばっています。」

彫金の作業は長年培われてきた職人の腕がものをいう。

「バリ取り」の作業もひとつひとつ手作業。

仕上げ磨きをすることで錫の白銀色が際立ちます。

仕上げヘラがけの様子。

極められた技を錫の小皿に夢

職人を目指す若手がいて、次に繋げようとするベテランもいる。そういった環境を作ることも自分の大切な仕事ですと控えめにおっしゃる木原さん。常に挑戦を続ける職人がひとつひとつ手仕事で仕上げる花小皿は、錫という柔らかく温かみのある金属を最大限に活かしたデザインだ。

木原「この商品開発の中心となったのは、当時在籍していた作家の女性でした。実はそれまでウチでは錫を取り扱うことがなかったのですが、鹿児島では古くから薩摩錫器という伝統工芸があり、『錫山』という山もあるほどの地元を代表する素材です。おかげさまでこの花小皿は、食卓を飾る小皿としてはもちろん、アクセサリーを置いたり、上でお香を炊いたりと、お使いになる方の自由な発想で使っていただいています。錫は他の金属よりも熱伝導率が高い素材なので、例えばお刺身を花小皿に盛り、ラップをして冷蔵庫に入れておいてからお客様にお出しすると、ちょうど良い冷気を保ってくれるのでおいしくいただけます。デザートなら水ようかんも同じようにすると夏場は喜ばれますね。また、使う方のライフスタイルにあわせて自由な発想で楽しんでいただきたいですね。」

お香立てに使ってもかわいい。

有限会社木原製作所
川辺仏壇,寺社,よろいかぶと等の装飾金具のデザインから,金型製作加工,表面処理に至るまで,一貫生産体制をとる装飾用金具メーカー。近年は,仏壇金具製造技術を応用し,工芸品の開発にも力を入れ,多数の商品開発を展開。
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