さんちのおと 藤内 紗恵子(岐阜)Saeko Fujiuchi -Potter from Gifu-
青く澄んだガラス釉、涼やかな表情が印象的な、藤内紗恵子さんのうつわ。うつわの底に溜まった釉薬はきらめく水面を、うつわを流れる釉薬は滴る水を思わせます。
Saeko Fujiuchi's vessels with clear blue glass glaze and refreshing expressions are impressive. The glass glaze reminds us of the sparkling water surface, and the glaze flowing through the vessel reminds us of dripping water.
琵琶湖のほとり、滋賀県草津市出身の藤内紗恵子さん。
「子どもの頃、磁器は白く宝石のように輝いて見えた」と話す藤内さんは、大学でセラミックデザインコースで磁器を学びました。
当初は、プロダクトデザイナーになりたいと思っていたそうですが、授業など学んでいくうちに、合理的なプロダクトデザインより、余剰や遊びがあり、ろくろのスイングしていく感じやリズム感が自分に合っていると、陶磁器の制作を始めました。
その後、専門的に陶磁器を学ぶために、陶磁器の一大産地であり、多くの作家が活躍してる岐阜県多治見市に移住、「多治見市陶磁器意匠研究所」で学んだのち、作家として創作活動をしています。
涼やかな潤いあるうつわ
ガラスのような涼しげな釉薬と表面の貫入の表情が印象的です。
ガラス釉は、とても透明度が高く、垂れたりたまったりする様が美しく、水のイメージを感じます。もともと青い色が好きだったこと、出身が琵琶湖であること、多治見はとても暑く、涼やかな「潤い」を感じる作品を作りたいと思ったことなどから、貫入釉や青色を用い始めました。
大きな貫入は焼いている際に入り、窯から出すときに細かいものは入り始め、ピンピン・キンキンと音が鳴ります。数時間から次の日まで音が鳴ることもあるそうです。
藤内さんは磁器ならではの軽やかさを出すために、成型はろくろを引いた後、さらにかんなで薄く削り、シャープさを際立たせています。そして焼成する窯の中でガラス釉が程よい流れ具合になるよう、釉薬の量、焼成時間の見極めに細心の調整、神経を使います。
一つ一つ微妙に異なる手仕事ならではの揺らぎ。貫入や釉薬の溜まりなど、ひとつひとつ表情の違ううつわに魅力を感じています。
これは「超硬鉋(ちょうこうかんな)」。うつわを形作り削る時などに使用する道具です。
道具自体が好きで、ホームセンターなどで、ついいろいろ見つけては、買い求めてしまうそうです。
プロフィール
藤内 紗恵子 Saeko Fujiuchi
- 1983年
- 滋賀県草津市生まれ
- 2006年
- 岡山県立大学デザイン学部工芸工業デザイン学部 セラミックデザインコース卒業
- 2011年
- 多治見市陶磁器意匠研究所 技術コース修了
- 2012年
- 同所 セラミックスラボ 修了
- 2013年
- 個展(陶林春窯・多治見)
- 2019年
- 有田国際陶磁展 熊本放送賞受賞
- 現在
- 岐阜県多治見市にて制作