さんちのおと 大谷 健一(別府竹細工)Otani Kenichi - Beppu bamboo craft
強くてしなやかな大分産の真竹を使い、繊細で力強い「別府竹細工」の伝統工芸士の第一人者である大谷健一さんは、工房 竹楓舎で若手を指導しながら竹を編んでいます。
Kenichi Otani, a leading traditional craftsman of the delicate and powerful "Beppu Bamboo Craft" using strong and flexible Oita madake bamboo, weaves bamboo while teaching younger workers at his studio.
埼玉県生まれの大谷健一さん。北海道で造園業に携わるなかで、造園業に携わるなかで竹垣の美しさに目覚めたことから竹職人の道に入りました。
2003年に日本で唯一、竹工芸の技を専門的に習得できる:大分県立竹工芸訓練センターの竹工芸科に入校し、以来別府に暮らしています。
翌年には同校の研究指導課に進み、中堅技術者養成指導研修を修め、卒業後2005年に竹かご製作工房『竹楓舎(ちくふうしゃ)』を立ち上げ、と同時に、伝統工芸士の油布 昌伯氏(ゆふ しょうはく)に師事し、現在は、若手を指導しながら竹を編んでいます。
常に「生活に密着したものづくり」ということを大切にしている大谷さん。
大分の竹細工は編み方だけでも200種類以上あります。それぞれの編み方の中で、職人が、自分の得意とする編組(へんそ)、好みの編組を中心に自分ならではの作品を生み出していきます。
大谷さんが得意とするのは「亀甲文様」。その制限の中でどう新しい表現が出来るのかを、竹ひごの幅や厚みを工夫したり、試行錯誤を繰り返しています。
竹の仕事は8割がたがヒゴづくり。この工程が一番重要です。
ヒゴづくりで使用する「竹割包丁」。刃と持ち手の間に胴金(どうがね)という輪っかがついているのが特徴です。
ほかの地域では竹を割るのに鉈(ナタ)を使いますが、竹を割るのも、皮を剥いで細くするのも、別府では包丁を使います。地道な作業を繰り返して細く薄くしたヒゴを、さらに面取り(角を取る作業)したら、ようやく材料のできあがりです。
こうして使う包丁を作る鍛冶屋職人、竹を採る人も年々減っています。将来は自分たちが担う必要性が出てきています。
竹は究極のSDGsのひとつとも言える、何年・何十年と使っていけるような素材です。
「竹のしなやかさと堅牢さを楽しんで欲しい。」と大谷さん。使っているうちにエイジングしてどんどん愛着がわき、自分の暮らしに馴染んでいくことでしょう。
プロフィール
大谷 健一 Kenichi Otani
別府竹細工伝統工芸士・一級竹工芸技能士。
1965年埼玉県生まれ。造園業に携わるなかで竹垣の美しさに目覚めたことから竹職人の道へ。大分県竹工芸訓練支援センター竹工芸科で学んだ後、伝統工芸士の油布 昌伯氏(ゆふ しょうはく)に師事。2005年に〈studio 竹楓舎〉を開く。ミラノやアムステルダム、ニューヨークなど海外での展覧会も好評。