さんちのおと 藤田永子(金工作家)Nagako Fujita -Metalwork artist-
鍛金技法により、幾重にもなる奥行きのある表情が出来上がり、異なった表情を見せてくれる、暮らしに新しいインスピレーションを与えてくれる、藤田永子さんをご紹介します。
The forging technique creates an expression with multiple layers of depth, giving it a different look and providing new inspiration for living. Please enjoy the metalwork of Nagako Fujita.
現在、東京都内のシェア工房にて製作している藤田さんは、建築家のお父上や、インテリアや生活の道具などにこだわりを持つお母様の影響か、子供の頃からモノを作るのが好きでした。
その中でも鍛金に興味を持ち、大学に進学。大学時代は、生活の道具だけでなく、オブジェなども製作していましたが、陶磁器や硝子の器など趣味として収集しているうちに、徐々に日常で使えるものを作りたい、という想いが強くなり、今のような、器や生活の道具を中心に作るようになりました。
鍛金(たんきん)
藤田さんのモノづくりは、真鍮・アルミ・銅や錫を、「鍛金」という技術を用いて制作しています。
「鍛金」とは、古くは打ち出し、鎚起(ついき)、鎚金などと呼ばれていました。金属がのびたり広がったりする性質を利用して加工する技法です。
「当て金」という様々な形をした金属の塊に地金を当てて、金鎚で叩いて加工します。金属加工の道は、自分の必要とする形の当て金と金鎚を制作できるようになるところから始まります。
作品の表面にテクスチャーを加えるための荒らし鎚(テクスチャーハンマー)も自作します。
「焼き鈍し」という工程。金属を火で炙り、柔らかくします。金属は叩いて加工すると堅くなるため、その都度この焼き鈍しの工程を挟みながら加工していきます。この工程を繰り返し、何万回と叩いて、この平たい板を背の高い壺に加工することも可能です。
表情豊かな金属のうつわ
幾重にもなる奥行きのある表情が出来上がり、異なった表情を見せてくれるうつわ達。藤田さんの個性が光ります。
金工は、陶芸などのように釉薬で色の表現をすることが出来ないため、独自性を出すのが難しい素材。その中で自分のシグナチャーとなるような表現を見いだせないかと、色々なテクスチャーが出るように、様々な実験、試行錯誤を重ね、こうした作風が生まれました。
金属のうつわは、あまり馴染みがなく、冷たい印象を持たれることが多いと思いますが、藤田さんの制作工程で生まれる歪みや溶け痕といった 自然に生まれる、造形やテクスチャ―を取り入れ、趣あり、実に豊かな表情に仕上げられています。
暮らしの中に取り入れて
そして、意外にも陶磁器や硝子とも相性がよく、アンティークのような風合いが、ごく自然にテーブルに馴染み、新しいインスピレーションも。
裏千家茶道をしている藤田さん、お茶関連の道具の製作も。最近お茶やスイーツのお店でもお取り扱いいただいたのだそうです。
様々なシルエットと槌目が美しいカトラリー。食卓にアクセントを添えてくれます。
「金属は、酸と塩分にふれると変色してしまいますが、こうして生まれる様々な表情や、経年変化を楽しんでほしい。」と藤田さん。
うつわとして、インテリアアートとして、アートのように… あなたのお好みでお楽しみください。
プロフィール
藤田永子 Nagako Fujita
Artist. metalwork artist / 金属造形作家
金属によるテーブルウェアやインテリアなどの暮らしの道具や、オブジェなどのアート作品を制作。日々の暮らしに取り込みやすい金属作品、また金属のあるライフスタイルを提案しています。
1989年 栃木県生まれ
2016年 東京藝術大学 美術学部 工芸科 鍛金 卒業
2018年 東京藝術大学大学院 美術研究科 工芸専攻 鍛金分野 修了