骨董のある風景 嘉月 梅の香りJapanese Antiques - The scent of Plum-
雪の中で花を咲かせる準備をし、清い香りでいち早く春の訪れを告げる花、梅。 咲きかねるように蕾を膨らませている姿を、お正月を過ぎたこの頃、よく見かけるようになります。
Plum, a flower that prepares to bloom in the snow and announces the arrival of spring. Around this time after the New Year, you can often see the buds swelling to bloom.
梅咲くまえの静けさ
きちんと整頓して暖かくした部屋に、抑えたしつらえで蕾だけの梅を生けてみました。
輪島塗の高蒔絵長角盆に、若狭塗の六角小箱。その中には紅白の梅の蕾のような干菓子を。
キャンディ包みを引っ張ると、中から紅白の干菓子が、梅花が咲いたようにこぼれ出します。
お膳や蓋付きの容れ物はこのように自由に楽しんでみてください。
お正月の慌ただしさが去ったあとの、静かな時間を愉しむためのしつらえです。

伊万里焼の中の異国
伊万里焼は、文禄・慶長の役で連行された李参平などの朝鮮人陶工達から始まり、明の滅亡の混乱に乗じて鄭成功が景徳鎮から伊万里に連れてきた中国人陶工達により飛躍的に技術し、ヨーロッパに輸出するまでに発展したと言われています。
南蛮人や南蛮船、また見込みに大きくクルス(cross/十字架)が描かれたものなど、稀にこのような異国の香りがする伊万里焼に出会うことがあります。
こういったものの多くは、ヨーロッパから買い戻されたもので「里帰り品」などと呼ばれています。
また一部は長崎に多く存在した隠れキリシタンたちが持っていたものとも考えられています。
隠れキリシタンの持ち物だった場合、大きくクルスが描かれることは少なく、周りの模様とうまく同化させて十字に見える模様にしています。
この錦手の皿は見込みにキリスト教の祭壇画にあるような模様が描かれ、口縁の内側には十字模様が描かれています。ここまで豪華で、更にはっきり十字と判るとなると、隠れキリシタンが使ったものではないな…などと想像していると、なんとなく謎めいたロマンを感じます。
文/写真:藤川佳惠
*歴史の解釈には諸説ありますので、あくまでも一説とお考えください。