骨董のある風景 -Japanese antiques-
暮らしに 奥行きのある美を添える、骨董のうつわを。
お花見に出かけなくても、お家の中でのお花見も粋なものです。室内で楽しむお花見は、器にこだわって骨董を選んでみませんか。
桜と鯛
お花見に出かけなくても、お家の中でのお花見も粋なものです。室内で楽しむお花見は、器にこだわって骨董を選んでみませんか。
「めでたい」などからくる語呂合わせ、色の美しさや優美な形、さらに年中四季を問わず獲れることなどから、鯛は縁起のよい魚として親しまれてきました。
なかでも桜の咲く頃の紅色に輝く鯛を「桜鯛」と呼び珍重してきました。頭から背にかけて、ただよい走る桜色。お刺身にしたときのほんわかとした桜色。そこに桜の花がなくとも、この季節と桜への想いを十分に楽しむことができます。呉須がこなれた江戸後期の染付が、桜色の鯛にはしっくりとくるようです。
桜のモチーフの骨董もいくつか入荷しています。奈良時代までは唐風の影響で中国で愛される梅が賞美されましたが、国風文化が花開いた平安時代から日本人は特に桜を愛するようになりました。この国を象徴する花として、桜は一年を通して楽しめるモチーフの一つです。
竹林と筍
桜がおわるとすぐ筍の季節。ただただ目に青く、静まり返った竹林を、筍を探しながらゆっくりと踏みしめるのはこの季節の楽しみです。
少し珍しいですが、骨董には「筍掘図」というのがあります。笠と蓑つけた人物が、ホリと呼ばれる直角の鍬のような道具に取ったばかりの筍を刺している図案です。
それよりもずっとお目にかかりやすい図案は「竹」ですね。真っすぐ伸びて固く根を張り、剛もせず柔もせずという性質が良しとされる竹は、成長のシンボルとして吉祥文のひとつとされています。
また竹の友で知られるのが松と梅です。常緑樹で冬も枯れない生命力に長寿のいわれがある「松」。寒中に葉より先に花を咲かせて春を告げ、またその香りは清く気品高い 「梅」。これら松・竹・梅 はいずれも寒さに耐える、めでたい植物として中国の宋代に文人画で好まれた組合せです。
松竹梅は、「歳寒三友」と称し、変わらぬ友情・得難い友を意味しています。日本で松竹梅を吉祥とするのはこれが起源となっており、桜と同様、吉祥紋として通年を通して楽しめる図案です。骨董にはこの三友がたくさん登場しますので、ぜひ探してみてください。
写真は、梅ご飯を、松の形に抜いたものを竹の盆に盛り込んだものです。松竹梅で遊んでみました。
文/写真:藤川佳惠
*歴史の解釈には諸説ありますので、あくまでも一説とお考えください。