骨董のある風景 -Japanese antiques-
暮らしに 奥行きのある美を添える、骨董のうつわを。
今月は、この季節にお目見えするお雛様にちなんで、お雛様のお道具のひとつ貝桶―貝合せのお話を。深みのある品と共に、昔の遊びへ思いを馳せてみませんか。
雛祭り
草木萌えいづる弥生。この季節にお目見えするのがお雛様です。たおやかで美しく、歴史の重みを添えて気品に満ちた姿には、他の人形とはまったく違った存在感があります。
子どもたちは誰に言われずとも、畏敬の心でお雛様を見上げます。決して手にとって衣装を着せ替えたり抱いたりはしませんが、お雛様が出ているあいだじゅう、毎日飽きずに仰ぎ見るのです。
そんな子どもたちと、お雛様を囲んでお茶とお菓子を楽しみましょう。蒔絵が美しい骨董の木皿は、しっとりした手触りと、贅沢に蒔かれた金の輝きがどこまでも深く心に触れます。また、伊万里の小皿にお菓子をのせても、それはそれは華やかなものです。子どもであってもうっとりすることでしょう。
貝合せ
貝の組み合わせが、対のものとしか合致しないことから、夫婦和合の象徴として尊ばれました。その願いを込めて、結婚式や雛まつりでは、蛤のお料理を頂く習わしです。
貝合せは、珍しい貝に季節にちなんだ歌をそえて競う平安貴族の遊び。先に片方の貝を並べておき、そのつがいとなる貝を見つけます。室町時代になると、貝の内側に絵や歌が描き添えられるようになりました。
貝合せの貝を収める容器である貝桶は、昔からお姫様たちの嫁入り道具でした。お雛様のお道具の一つですね。女の子がいないご家庭も、夫婦だけのご家庭も、和合の象徴としてこの季節に貝合せを飾ってみてはいかがでしょうか。
文/写真:藤川佳惠
*歴史の解釈には諸説ありますので、あくまでも一説とお考えください。