骨董のある風景 -Japanese antiques-
暮らしに 奥行きのある美を添える、骨董のうつわを。
今月ご紹介するのは『伊万里』。
伊万里の色絵や金彩が描く豪奢さ、漆に描かれた蒔絵の繊細さ。現代の品とは違った美しさや深みをご堪能下さい。
伊万里
骨董と聞いてまず思い浮かべるのが、伊万里の金襴手(きんらんで)ではないでしょうか。錦手(にしきで)とも呼ばれる、赤や青などの色とりどりの彩色に金彩が施された様式です。
江戸時代初期に日本初の磁器が誕生しました。肥前は有田。現在の佐賀県の有田町です。有田で作られた磁器は近くの伊万里港から出荷され国内外へ渡ったため、「伊万里焼」と呼ばれたのです。伊万里焼は日本の旧家から、やがて世界の王侯貴族を魅了しました。
幕末明治になると、暮らしの食器としても広く使われました。この頃の品になると日々使いやすい形が揃ってきます。実際に暮らしの中で使ってしみじみと美しさを感じていただければと、今回の特集では、この時期の品々を中心に集めています。
古いものを古いままにせず、新しく感じたい。200年も前の江戸時代のうつわに、パンとチーズをのせてみたら。耳を澄ませてみてください、見たこともない食べ物をのせられて、うつわが驚いている声が聞こえてくるようです。
大鉢をつかう
伊万里の美しさが凝縮しているのは、大鉢ではないでしょうか。特に、三客の鉢が入れ子になった「三つ組(みつぐみ)」には圧倒的な迫力があります。
昔の家庭では、行事ごとに家族親戚が集まることが多く、大きなうつわが重宝されました。いまの暮らしでは、家族も少人数になり、人を招くことも減ってしまい、大きなうつわを探しても中々見つかりません。だからこそ、大鉢を骨董で楽しんでいただきたいものです。
たっぷりサラダを盛り込んで、テーブルの上で混ぜる。まるで、ちょっとしたパフォーマンスです。また来たる雛祭に、はちらし寿司を盛り付けてみてはいかがでしょうか。食卓も華やかになり、会話もはずむことでしょう。