うるしごと
うるし(漆)は、古くから日本で使われており、海外では「JAPAN」とも呼ばれ、日本を代表する伝統工芸品として知られています。漆器は、お手入れが大変そう、古ぼったい感じがする、と敬遠している方も多いかもしれません。しかし、思いのほか、漆器の取り扱いはそんなに難しくなく、いくつかの基本的なことさえ守れば、軽くて丈夫、保温性や抗菌性もあり、永く愛用いただける器です。
THE COVER NIPPONでは、 日本人に生まれたからには、お椀やお重など古くから使われている漆器を手にしていただきたい、という思いから、信頼できる産地から確かな技術を背景に生まれてくる漆器を、季節や産地にあわせて、皆様にひとつひとつご紹介していきます。
木目の美しさを生かした「春慶塗」
初秋にご紹介するのは、 岐阜県飛騨高山の『飛騨春慶』。 飴色のやわらかな飛騨春慶は、秋のやさしさとどこか似ています。とても素朴な漆塗りで、蒔絵や螺鈿を施さず、木目の美しさを見せるなんとも温かみのある漆器です。
漆塗りは、黒漆・朱漆が基調とされる中、春慶塗は透漆(すきうるし)で仕上げ、木肌の持つ美しさをそのままに生かすところに特徴があります。木目の美しさを楽しむこの技法は、室町時代に春慶という職人が考案し、全国に広まったそうです。その中でも、飛騨は今もその伝統を受け継ぐ代表的な春慶塗の産地です。 板を立体的に仕上げる曲げの技術は特に優れており、重箱・盆・茶道具などが特に有名です。
木地師と塗師の技が生み出す飛騨春慶
「春慶には飛騨の伝統工芸が集約されている」という言葉の通り、飛騨春慶は「木地づくり」と「漆塗り」が二者一体となって完成されます。
木地師が、材を見極め、伝統の技を習得するには、長い経験と磨き上げた技術が必要とされ、それら伝統を守り伝えていくのも、木地師の必要な役目です。こうして醸し出された木目の美しさは、塗師によってさらに引き立てらます。ひとつひとつ違う気の表情を最大限に活かし、始めてから仕上げるまでに3~4カ月かかり、何度も漆を重ねて摺(す)りこみ、最後に仕上げ塗りをし、美しく丈夫な漆器に仕上げられていきます。
今回、特別に重箱や弁当箱、お盆や茶道具など、様々なかたちのものが多数届きました。木目や塗りだけでなく、造形の美しさもお楽しみいただけます。深まりゆく秋とともに、 時を重ねるごとに美しさを醸し出す飛騨春慶を、お楽しみください。