春燈(しゅんとう)
啓蟄(けいちつ)、冬ごもりしていた虫が、春の陽気に誘われて、土の中から動き出すころ、花も木々も様々な生きものが目覚めはじめる季節、 一雨ごとにあたたかくなり、春の訪れを感じられます。
古来より日本人は、煌々とした明かりではなく柔らかな明かりに美を感じていました。日本では、蝋燭や脂で灯した裸火をそのまま明かりとして使っていました。室町時代に入ると風よけのために火を和紙で囲うようになり、江戸時代、和紙は灯りに欠かせないものとなり、和紙を通した柔らかい光が人々に好まれたのです。
和紙の魅力に注目した彫刻家のイサムノグチは、「和紙は詩的で、はかなく、羽根のように軽々としている。むき出しの電気は和紙の魔術によって自然の光、太陽となった」と語っています。
日本の伝統的な建築は、影が効果的に作り出されるように設計されており、庇(ひさし)は直射日光を遮り、障子はひかりを間接的にやさしいひかりへと変えました。 そして、 和紙を通した行燈のひかりは、部屋全体に広がる豊かな陰影を生み出しました。
谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」では、「美は物体にあるのではなく、物体と物体との造り出す「陰翳」のあや、明暗にあると考える。夜光の珠も暗中に置けば光彩を放つが、白日のもとに曝せば宝石の魅力を失う如く、「陰翳」の作用を離れて美はないと思う。」と書かれています。暗い部屋に暮らしていた私達の祖先は、いつしか陰翳のうちに美を発見し、やがて美の目的に添うように陰翳を利用する。日本人の繊細な感受性とあかりへの美意識が感じられます。
夜はまだ、長くひんやりとした空気をおびています。
?春燈??。和紙を通してみるあかりは、どんな表情を見せてくれるでしょう。
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