静謐な木目の美しさ。指先で木目をなぞると、ふっくらと滑らかなフォルムに優しさを感じます。― 山中漆器の椀。霜月となり、この器でいただく汁物は、料理の温かさ以上に、身も心も温めてくれることでしょう。
石川県の伝統的工芸品・山中漆器が作られるようになったのは、およそ400年前。良質な材木を求めて山々を移動する木地師が、越前から移住したことに始まるとされています。輪切りにした丸太の年輪に対して平行に、つまり、木が育つ方向に逆らわずに器を削り出す山中独自の技術により、木に再び命が吹き込まれるのです。
薄挽きで繊細な口元、掌に納まる軽くあたたかな木のぬくもり、そしてつくり手の心を感じることができる器。毎日の食卓をあたたかく優しく包んでくれることでしょう。
2018年9月27日