立夏
立夏を迎え、青々とした緑爽やかな五月晴れの季節です。暦の上では夏。「夏が立つ」「夏は来ぬ」とも表されています。
立春から数えて八十八日目の夜。”八十八”という字を組み合わせると「米」という字になることから、この日は農業に従事する人にとっては特別な縁起のいい農の吉日とされていました。この頃は、茶摘みの最盛期でもあり、縁起を担ぐという意味合いと気候条件も含めてこの時期のお茶は極上です。お茶の新芽には前年の秋からひと冬越えて蓄えられた成分があふれています。
日本茶のひとときをより一層豊かにしてくれる、その役目を担うひとつが「急須」。お茶屋さんの店頭でよくみかける朱い急須。それは朱泥でつくられた常滑焼の急須です。少し前まで、どこの食卓でも使われていた朱泥の急須は、今ではあまりみかけることが少なくなってきました。
常滑焼では、伝統的な職人技のもと、機能性を追求した急須作りに取り組んでいます。常滑の急須はお茶を淹れたとき、酸化鉄とお茶のタンニンが反応して、苦味渋味がほどよくとれ、まろやかな味わいになるという特徴があります。釉をかけず、焼締められたなめらかな急須は、余分な成分を吸着してお茶の味をよくしてくれます。また、手入れをして使いこむと光沢が増し、お茶の味わいもよくなり、愛着の「道具」となっていきます。
新茶特有の若々しい香りが失われないうちに製茶された一番茶を、ゆったりと寛いで飲みたいものです。
